中古ドメインには、インデックスしやすく集客しやすいなど、複数のメリットがある。
しかし、近年では自治体等の公的機関が使用していたドメインを第三者が取得し、新たなサイトに転用・悪用されるといった事例が増え、社会的にも問題視されている。
自治体や公共機関等の使っていたドメインは被リンクも品質の高いものが多く、Googleからの評価も高い。ドメインパワーも高いので、中古ドメインを探している側からすれば魅力的だ。
厚生労働省の公式ページとして使用された新型コロナ関連のドメインがオークション出品され、300万円以上の高値で落札されたこともニュースになった。
このようなニュースを耳にすると、「中古ドメインには違法性があるのでは?」と心配になる方もいるだろう。
ここでは、中古ドメインの違法性について解説する。
違法となる事例を把握して、安全に中古ドメインを活用しよう。
中古ドメインの違法性
SEO効果を高めるためにも、中古ドメインの使用は必須と考えるブロガーやアフィリエイターは多数存在する。
安心して活用するためにも、中古ドメインの違法性や、違法性ありと判断されるケースを詳しく見ていこう。
中古ドメインの売買は違法ではない
結論からいえば、中古ドメインの売買は違法ではない。
厚生労働省が使用していたドメインであっても、売るのも購入するのも違法ではない。
では、何が問題なのかというと、公的機関等のサイトで使用されていたドメインは悪用される可能性が高い、というのが問題なのだ。
公的機関の偽ホームページを構築して、フィッシングサイトとして利用されれば、多くの人が騙される可能性がある。
実際、2023年から2024年にかけて複数の自治体がそれぞれ過去に登録していたドメインを第三者に取得されたとして、ドメイン名を公開、注意喚起するケースが増えている。
自治体側のドメインの手放し方にも問題はあるものの、自治体からの注意喚起を受ける事態に陥れば、中古ドメインのメリットよりもデメリットのほうが重くのしかかってくる可能性もある。
違法性ありと判断されるケース
中古ドメインの利用は違法ではないが、違法性ありと判断されるケースもある。例えば商標権を侵害するようなケースだ。
登録商標済みの商品名や芸能人の名前などがドメイン名になっている場合、その中古ドメインを第三者が利用すれば不正競争防止法に抵触する恐れがある。
中古ドメインを取得する際は法的な問題がないか、ドメイン名の確認も忘れてはならない。
中古ドメインの利用にはペナルティ等のリスクもある。デメリットも把握した上で上手に活用しよう。
不正競争防止法について
商標権等、他人に何らかの権利がある中古ドメインを第三者が利用すると、不正競争防止法違反と判断される可能性がある。
不正競争防止法とはどのような法律か、詳しく見ていこう。
不正競争防止法とは
不正競争防止法とは、事業者間の公正な競争を守り、不正競争を防止するための法律だ。
不正競争防止法が制定された目的は、以下のとおり。
この法律は事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
引用:e-GOV「不正競争防止法」
商標等を含むドメインは、この法律によって守られている。
不正競争防止法で違法性ありのドメイン使用
不正競争防止法において、以下のドメイン使用は不正競争と定義されている。
不正の利益を得る目的で、又は他人に損害を加える目的で、他人の特定商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章その他の商品又は役務を表示するものをいう。)と同一若しくは類似のドメイン名を使用する権利を取得し、若しくは保有し、又はそのドメイン名を使用する行為
引用:e-GOV「不正競争防止法」
商標権等のある商号や商品名等を示すドメインを、不正に利益を得る目的や他人に損害を与える目的で利用するのは違法、ということだ。
中古ドメインを自分で探す場合など、商標権等に抵触しないかチェックが欠かせない。
ドメインの不正競争での裁判事例
株式会社マリカー (現・株式会社MARIモビリティ開発) という会社が、任天堂株式会社に訴えられた裁判事例を紹介しよう。
株式会社マリカーは任天堂株式会社のマリオカートを模した、公道カートビジネスを展開していた会社だ。
株式会社マリカーは、マリオのキャラクターコスチュームや商品名を不当に使用していた。任天堂株式会社が株式会社マリカーに対して、不正競争行為に該当する行為として使用差止めや損害賠償の支払い等を求めたのだ。
2018年9月に、不正競争行為の差止めと損害賠償金5,000万円の支払いを命じる判決に至っている。 かなり話題になったので覚えている方も多いだろう。
この裁判ではドメインの権利関係も争点となっており、判決では「maricar」等のドメイン使用が差止めとなった。
このケースではコスチュームや商品名を使ったサービス提供ということで注目を集めたが、ドメイン名でも裁判沙汰になることがあるのだ。
中古ドメイン使用で違法性を回避する方法
中古ドメイン使用が違法と判断されれば、使用差止めとなる可能性が高い。費用をかけて入手したドメインが違法と判断されたら元も子もない。
違法性を回避するための方法もチェックしておこう。
運用履歴を確認する
中古ドメイン入手するにあたっては、運用履歴の確認が必要だ。
どのようなサイトで運用されていたか分かれば、リスクも排除しやすいだろう。
中古ドメインの運用履歴を調べる際は、ウェイバックマシンという無料ツールを使うといい。
ウェイバックマシンの使い方は、以下の記事で解説している。
商標等を確認する
中古ドメインを探すときは、ドメインパワーなど指標のみに注目しがちだ。しかし、ドメイン名に商標登録済みの文字列が含まれていないかの事前調査を行うことも重要だ。
登録商標済みかどうかの確認は、特許情報プラットフォームの簡易検索を利用するといい。
中古ドメインの選定方法については、以下の記事で詳しく解説している。失敗のないようにこちらもチェックしてほしい。
安全な中古ドメイン利用で効率化しよう
中古ドメインは、被リンクやサイトの評価等を引き継ぐことで検索順位向上を狙えるメリットがある。新規ドメインでは得られないメリットだ。
検索エンジンで上位表示できれば、ブログやサイトのアクセス数を集めるのにも貢献してくれるだろう。
その反面、過去の利用者に商標権等があれば、法律違反となることも認識しておく必要がある。
中古ドメインを入手する際は権利関係に違法性がないか確認するなど、事前に対策をしておくと安心だ。
中古ドメインで失敗しやすいポイントをまとめた記事も参考にしてくれ。
有益な中古ドメインを入手して、戦力になるWebサイト構築に役立てよう。